みなさん、こんにちは。おいなり夫婦です。
このブログの読者の方々の中には、FIREやサイドFIREを目指してブログを運営されていたり、サイドFIRE後に自分の好きなビジネスをやってみたい!といった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そういった時に必ず役に立つのがPRやマーケティングのスキルです。
今回から始まるこの新連載「マーケターいなりのPR講座」では、いなり(夫)がPRの現場で培った知見やお役立ち情報をお伝えしていきます!

お役に立てるようがんばりますっ!!
第一回では、様々なマーケティング・PR活動の基本知識として役に立つ、佐藤義典さん著のマーケティング関連の書籍「売れる会社のすごい仕組み」をご紹介します。
マーケティング担当者必読!本の概要
本書では、レストラン「そーれ しちりあーの」を舞台に、店長(兼社長)の売多真子が経営不振の店舗を立て直すべく奮闘する姿を通してマーケティングのいろはが学べるようになっています。
主に学べるのは以下の2つです。
①マーケティング戦略の立て方
②戦略を数字に落とし込んで実行する方法
①のツールとしては「BASiCS」というシンプルなフレームワークと「3つの差別化軸」、②のためのツールとして「売上5原則」、「マインドフロー」、「プロダクトフロー」の3つのフレームワークと「せ・す・じ評価」という心構えが紹介されています。
①と②を手順通りに行うと、明日からでも現場で通用する実戦レベルの知見が手に入るため、以下のような方には間違いなくオススメの本です。
①マーケティングを仕事にするあらゆる方
②中小企業の経営者の方、ひとり会社の社長の方
③フリーランスで仕事をしている方

本の中で紹介されていた重要な要素について、かいつまんでご紹介していきます!
戦略の立て方(1)BASiCS
BASiCSは経営戦略やマーケティング戦略に必要な5つの構成要素を、一貫性を持って考えるためのフレームワークです。

マーケティングのフレームワークには「5Force分析」「バリューチェーン」「SWOT分析」など様々なものがあります。
どのフレームワークも、マーケティングにおいて特定の領域に特化しているものが多く、網羅的な分析のためには、大きな労力をかけて複数のフレームワークを使いこなす必要があります。

勉強するだけで実用までできないということが結構あるんですよねえ
その点、BASiCSは一つのフレームワークで全ての領域を一貫性を持って考えることができるのが優れた点です。
マクドナルドを例にBASiCSの各要素を説明していきます。
Battlefield(戦場と競合)
自社と自社の商品がどこで、誰と戦っているのかについての要素です。
戦場は「顧客にとっての価値」に基づいて決まり、競合は「その価値を求める顧客の頭に浮かぶ選択肢の集合」になります。
例①「お手軽なハンバーガーの食事」という価値の場合
競合=ロッテリア、モスバーガー
例②「コーヒーでちょっと一休み」という価値の場合
競合=ドトール、スターバックス
例③「駅から近い、早い、安い食事」という価値の場合
競合=吉野家、立ち食いそば屋
戦場や競合は、必ずしも業種や業態によって決まらず、顧客が決めることを覚えておきましょう。
Asset・Strength(独自資源・強み/差別化)
Sterngth(強み/差別化)は顧客が競合ではなく、自社商品を選ぶ理由のことで、Asset(独自資源)は強み/差別化を長期的に可能にするための強みの源泉のことです。
独自資源にはハード資源(設備など目に見えるもの)とソフト資源(ノウハウや企業文化などの目に見えないもの)の2種類があります。
例:120円(本書が執筆された2009年4月のSサイズ価格)のコーヒー
マクドナルドの1つの強みである「低価格性」は、短期的に競合他社も真似できても長期でそれを続けることは難しいです。
これを可能にしている独自資源には以下のようなものがあります。
・3754店(2008年末時点)という店舗数(ハード資源)
・低コストで仕入れたり製造するノウハウや仕組み(ソフト資源)
独自資源は、直接顧客の価値には繋がらないことが多く、「強み/差別化」となって初めて顧客の価値になります。

例えば「メニューの開発ノウハウ」という独自資源が「美味しいハンバーガー」で顧客の価値になる。とかですね。
また、強み/差別化は競合との相対比較であるため、競合によって強みが変わります。
例えばマクドナルドは、ファミレスと比べて早くて安いですが、吉野家と比べると遅いし高いですし、吉野家と比べると落ち着いて過ごせますが、ファミレスよりは落ち着けないという感じ。
常に競合との比較の中で強みを考えることを忘れないようすることが大事です。
Customer(顧客ターゲット)
戦略の核となる「誰が自分達にとってのお客様か」という要素です。
BASiCSでは各要素の一貫性が最も重要ですが、一貫性の中核(基準)にあるのが顧客です。
「戦場と競合」も「強み/差別化」も顧客が誰かによって変わってきます。
なお、顧客ターゲットを考える際は、「20代女性」などという抽象的なレベルで考えずに、仕事・趣味・読む雑誌・ライフスタイルなどを具体的に考えて、それぞれのニーズに合わせるようにしましょう。

顧客の「集合」じゃなくたった一人の「個人」を考えてみると良いかもしれません
自社が付き合いたい顧客を選び、顧客からは自社の強みが愛される「相思相愛の関係」を結ぶことが大切です。
・顧客ターゲット
小さい子供のいる家族
・戦場
休日の家族のランチ
・強み/差別化
ハッピーセット
Selling Message(メッセージ)
これまでの4つの戦略を社内外にどう伝えるか、という要素です。
言い換えると、「競合」と比べて「独自資源」に支えられた「強み」を「顧客」にどう伝えるか。
・「あいててよかった」というキャッチコピー
→利便性・長時間営業の戦略を顧客目線の言葉で
BASiCSでは5つの要素で広い領域をカバーする分、矛盾がなく具体的な内容になるように何度も繰り返しブラッシュアップすることが大事です。
一貫性を保つために意識するべきなのが、次に説明する「3つの差別化軸」です。
戦略の立て方(2)3つの差別化軸
差別化軸は、BASiCSの「強み/差別化」を実現するための方向性で、大きく「手軽軸」「商品軸」「密着軸」の3つに分かれます。
それぞれについて、理容店を例にしながら説明していきます。
手軽軸
「早い」「安い」「便利」が売りの手法です。
理容店で言えば、カット10分で価格が1000円の「QBハウス」が典型になります。
早さと安さに加えて、立地が駅の中などの便利なところにあることも重要です。
客単価が安くなるので、客数を稼ぐために回転数を上げることを重視します。
商品軸
商品・サービスの品質や技術力で勝負する手法です。
表参道などの流行発信地でカリスマ美容師がいるような美容院が典型になります。
いろいろな面でコストがかかるため、価格も高くなります。
密着軸
顧客の個別のニーズに応えることを売りにする手法です。
お客さん一人一人の顔と名前、髪質や好みの髪型を知り尽くす地元の理髪店や美容院などが典型になります。
「いつも通りね!」で済む気楽さや、こだわりに応じたカスタマイズ性などが特長です。

著者の佐藤さんは、これからの成熟社会には「密着軸」が合ってると書いてました!
これらの差別化軸に沿って、BASiCSの一貫性が保たれて、マーケティングの4Pが定められていきます。
・商品/サービス(Product)
顧客に価値をもたらすもの
・価格(Price)
売り手に対して支払われる価値の対価
・販路/流通(Place)
顧客に価値を届ける経路、チャネル
・広告/販促(Promotion)
顧客に商品の価値を伝える

戦略実行のツール(1)売上5原則と「せ・す・じ評価」
戦略は考えただけでは意味がなく、それによって売上や利益などの成果が出されなくてはいけません。
戦略がどう売上や利益などの数字に繋がるのかを考えていきましょう。
戦略の数値化にあたっては、「売上5原則」と「せ・す・じ評価」を使用していきます。
売上5原則
利益=売上-費用で求められるため、利益を上げるには「売上を上げる」か「費用を下げる」かの2つの方法しか存在しません。
この内、売上を上げることに注目すると、売上=客数×客単価で求められるため、売上を向上させるには「客数を増やす」か「客単価を上げる」かしかないことが分かります。
さらに、客数は「①新規顧客の獲得」と「②既存顧客の維持」に、客単価は「③購買頻度の向上」と「④購買点数の増加」と「⑤商品単価の向上」に分解して考えられます。

せ・す・じ評価(戦略→数字→実行→評価)
戦略を用いて成果を出すには、戦略→数字→実行→評価のサイクルを、売上5原則を使って回していくことが重要です。
ゴールが「売上の向上」だった場合、まずは売上の目標となる「数字」を明確にしましょう。
その上で、売上向上に向かうために追うべき指標を、戦略に紐づいて具体化していきます。
重視する指標は、手軽軸であれば「新規顧客」、商品軸の場合は「単価向上」、密着軸の場合は「顧客維持」と戦略によって異なり、その指標に応じて行動も変わってきます。
手軽軸 | 商品軸 | 密着軸 | |
軸の方針 | 多くの顧客を狙い低価格で 去るものを追うより新客を狙う |
良いものを高価格で。 新顧客より既存顧客へ |
一度お客様になったら 徹底的にニーズに応え離さない |
新規獲得 | ◎ | ✖️ | ✖️ |
顧客維持 | ✖️ | ◯ | ◎ |
頻度向上 | ◯ | △ | ◯ |
点数増加 | △ | ✖️ | △ |
単価向上 | ✖️ | ◎ | △ |
定期的に売上5原則の数字を把握することで、数字が落ちても原因の仮説を立てやすくなるでしょう。
分析するときには、「定性」と「定量」を行き来して考えるのが大事で、定量は「量」定性は「質」に注目します。
原因の仮説を考えるにあたっては、自社だけでなく競合の戦略BASiCSも行っていくことが有効です。
ちなみに、達成すれば戦略が自律的に実行されるような数字を「戦略指標」と呼びますが、戦略指標は必ずしも売上5原則の数字になるとは限らないため、どの数字を目指せば自分たちの戦略が実行されるのか?を考えることが重要です。

どんな数字も売上5原則みたいに、具体的な個別の対策を考えられるレベルまで分解するのが大切ですね
戦略実行のツール(2)マインドフロー
ビジネスのゴールの1つは繰り返し商品を購入したり、いい口コミを広めてくれる「ファン」を増やすことです。
ファンはいきなりは生まれず、顧客がファン化するまでのプロセスを分解すると「認知」「興味」「行動」「比較」「購買」「利用」「愛情」の概ね7ステップになります。
商品によって各ステップを完了するまでの時間は異なり、業種業態によってプロセスの数も変わりうるため、個々に判断が必要です。
ただし、マインドフローのステップ数が少なすぎると対応するべき行動に漏れが出やすくなるし、多すぎると対応の検討が複雑になりすぎるため注意しましょう。
各ステップで止まってしまうと、その先のステップには進まなくなってしまうため、漏れなく全ステップで手を打つ必要があります。
なお、マインドフローは下方にあるステップから改善することが重要で、費用対効果も高くなります。

下方にあるステップほど、関係性の深い既存のお客様が関わるものだから即効性があるということですね
戦略実行のツール(3)プロダクトフロー
顧客の心の流れが「マインドフロー」であるのに対して、そのマインドフローに対応した商品の流れが「プロダクトフロー」です。
プロダクトフローは「あげる商品」「売れる商品」「売りたい商品」の3つに分けて考え、その間の流れを作ることで出来上がります。
あげる商品 | 売れる商品 | 売りたい商品 | |
利益貢献 | 売上はゼロ むしろ販促コストがかかる |
単価・利益が小さく あまり儲からない商品 |
単価・利益が大きく 儲かる商品 |
購買者 | 新規顧客 | 通常顧客 | ファンリピーター |
マインドフロー | 認知・興味・行動 | 比較・購買・利用 | 購買・利用・愛情 |
例①ガム | 配布サンプル | 1パック | 5パック |
例②カフェ | 店頭試飲 | 店内で飲むコーヒー | 家で使うコーヒー豆 |
例③プリンタ | 店頭の印刷サンプル | プリンタ | インク |
おいなり夫婦による総評
この本は、いなり(夫)がPR・マーケティング関連の仕事をしているため、勉強用に買った本でしたが、今改めて読み直すとブログの運営や将来起業をした時にも非常に役立ちそうな内容でした!
マーケティングの理論書は多種多様で内容も小難しいものが多いですが、この本は実戦レベルの高度な内容をストーリー仕立てでキャッチーに説明していて、サクッと読める良書になっています。
いなり(夫)は5年前と最近この本を読みましたが、どちらも1日で楽しみながら読むことができました♪
この本はマーケティングに必要な普遍的な理論をシンプルにまとめてくれているため、大変オススメです。
同じ著者の前日譚?とも言える入門編「ドリルを売るには穴を売れ」もオススメですので合わせて是非。
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